2007年09月20日
緑の町に舞い降りて
「あのね・・日曜日は、仕事になっちゃった」
帰省の荷造りをしていた夜に、そんな電話連絡。
楽しみにしてた日曜日の山行きドライブ。
ワクワク一ヶ月、がっかり二日間・・
一月もワクワク出来たからこれでチャラかなあ~と
思うものの、しばらくは意気消沈である。
東京に居られる時間はあと60時間。
「いつ、帰ってくるの?」と散々沖縄へ催促電話をしてきた
時からこの日まで約2ヶ月。
ワクワク2ヶ月、会えるの数時間・・
お互い様だなあと、苦笑しながら、私は
山ドライブ代わりに今夜会うための身支度をする。
待ち合わせの連絡を受けて乗る中央線。
実家のある最寄り駅から20分ほど揺られると、そこは緑の町。
車窓の景色は、三ヶ月ぶりにもかかわらず、全然懐かしくない。
それでも私はこの町に、数ヶ月に一度舞い降りてくるのだ。
そしていつもの待ち合わせの場所で、白い車の助手席に乗る。
「あ~久しぶり」
「うん」
照れているのか、暗い車内で顔が見えないせいか、
まるで昨日も会ったかのような、だらりとした挨拶。
うん、とか、すん、とかみたいな会話にならない車内。
多忙な仕事帰りのせいか、疲れているのかな・・と
会話に躊躇しながら、腕を組み足を組みを繰り返す。
この辺の地理には明るくない私は、すれ違う車のライトを
ぼんやりと眺め、会話の糸口を探していた。
「・・・あのさあ」
「ん?」
「明日、約束してたドライブ行けなくなっちゃったから、せめて
山に近い道を走ってみてるんだけど・・ごめんね。これしかできなくて」
「ああ・・ありがとうね」
「沖縄帰ったら、また大変なんでしょ?だからせめてもの気分転換に
なったらいいなと思ってさ」
「ふふ、別に大変ではないけど・・ね・・。ありがとう」
「それでね」
「・・?」
「カエッテキテクレテホントウニアリガトウ」
お互い視線を合わせず、暗く伸びる目の前の一本道だけを
見つめていたときに、ぽろりと聞こえた台詞。
あ~、刺さった・・胸に何かが。
そして・・刺さったところから、ツヤツヤのピンク色した水あめが
溶けてだらだらと流れ出す感覚。
その言葉の一字一字が英字のマグネットのように、シールのように
私の心に張り付く。思わず黙りこくる。組んでいた足は元通りに、
腕は意味も無く、もう片方の腕をぼりぼりと掻き出す。
大人になればなるほど、言葉を選びすぎる。
語尾の上げ方から、間の採り方、比喩や形容詞。
それは時として誤解や不可解を招き、悩みや後悔となる。
こんなばかばかしい苦労を、どうして厭わずやってきたんだろう。
今、どんなモノよりも心に溶け込んだこの言葉。
私の心は意外と単純に溶けてしまうのだ。
単純だったんだなあ・・と苦笑しながら、私は最高の言葉の
お土産を抱えて、空港まで・・遠い海辺の町に舞い降りる支度をする。
帰省の荷造りをしていた夜に、そんな電話連絡。
楽しみにしてた日曜日の山行きドライブ。
ワクワク一ヶ月、がっかり二日間・・
一月もワクワク出来たからこれでチャラかなあ~と
思うものの、しばらくは意気消沈である。
東京に居られる時間はあと60時間。
「いつ、帰ってくるの?」と散々沖縄へ催促電話をしてきた
時からこの日まで約2ヶ月。
ワクワク2ヶ月、会えるの数時間・・
お互い様だなあと、苦笑しながら、私は
山ドライブ代わりに今夜会うための身支度をする。
待ち合わせの連絡を受けて乗る中央線。
実家のある最寄り駅から20分ほど揺られると、そこは緑の町。
車窓の景色は、三ヶ月ぶりにもかかわらず、全然懐かしくない。
それでも私はこの町に、数ヶ月に一度舞い降りてくるのだ。
そしていつもの待ち合わせの場所で、白い車の助手席に乗る。
「あ~久しぶり」
「うん」
照れているのか、暗い車内で顔が見えないせいか、
まるで昨日も会ったかのような、だらりとした挨拶。
うん、とか、すん、とかみたいな会話にならない車内。
多忙な仕事帰りのせいか、疲れているのかな・・と
会話に躊躇しながら、腕を組み足を組みを繰り返す。
この辺の地理には明るくない私は、すれ違う車のライトを
ぼんやりと眺め、会話の糸口を探していた。
「・・・あのさあ」
「ん?」
「明日、約束してたドライブ行けなくなっちゃったから、せめて
山に近い道を走ってみてるんだけど・・ごめんね。これしかできなくて」
「ああ・・ありがとうね」
「沖縄帰ったら、また大変なんでしょ?だからせめてもの気分転換に
なったらいいなと思ってさ」
「ふふ、別に大変ではないけど・・ね・・。ありがとう」
「それでね」
「・・?」
「カエッテキテクレテホントウニアリガトウ」
お互い視線を合わせず、暗く伸びる目の前の一本道だけを
見つめていたときに、ぽろりと聞こえた台詞。
あ~、刺さった・・胸に何かが。
そして・・刺さったところから、ツヤツヤのピンク色した水あめが
溶けてだらだらと流れ出す感覚。
その言葉の一字一字が英字のマグネットのように、シールのように
私の心に張り付く。思わず黙りこくる。組んでいた足は元通りに、
腕は意味も無く、もう片方の腕をぼりぼりと掻き出す。
大人になればなるほど、言葉を選びすぎる。
語尾の上げ方から、間の採り方、比喩や形容詞。
それは時として誤解や不可解を招き、悩みや後悔となる。
こんなばかばかしい苦労を、どうして厭わずやってきたんだろう。
今、どんなモノよりも心に溶け込んだこの言葉。
私の心は意外と単純に溶けてしまうのだ。
単純だったんだなあ・・と苦笑しながら、私は最高の言葉の
お土産を抱えて、空港まで・・遠い海辺の町に舞い降りる支度をする。
Posted by yuzuco at 17:22│Comments(0)
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